「舞?

 どうして……。
 二人は、どうして私を知ってるの?」






えっ?



小さく紡がれた舞の言葉に
私は……抱きしめた腕を解いた。






「舞?

 ……瑠花……、
 もしかして舞……記憶喪失なの?」




恐る恐る思いついた言葉を口にした。





私のその言葉に瑠花は……うんと、
ゆっくりと頷いた。






「貴女、名前は?」




顔も名前も全て知ってるのに、

舞の中に……私の記憶はない。



「ねぇ、舞。

 嘘だって言ってよ。

 なんで……なんで覚えてないの?

 私たち、友達同士じゃない?

 小さい時から、お祖父ちゃんの道場で
 剣道一緒にやってきたでしょ。

 花桜だよ。

 花桜のこと覚えてないの?」





舞の体を両手で掴みながら、
ゆさゆさとゆさぶって思いのままに叫んでいく。
 



「芹沢先生、失礼いたします。
 山波くん。落ち着きなさい」



舞に縋り付く私を、
舞から力強く引き離していく。



それと同時に……背後から、
衝撃が入って私の意識はまた落ちて行った。






……舞……。







なんで覚えてないの?