何故?





どうして……この人は泣くの?







「悪いが、
 ちょっと付き合って貰おうか」




助けてくれた男の人が
私の腕を強引に掴み取る。




力強く掴まれた腕は、
逃げようとしても振りほどくことが出来ない。





「俺は壬生浪士組局長。
 
 芹沢鴨。

 こいつは、瑠花。

 お前さんのこと知ってるらしいぞ。

 ずっと探してたんだ。

 必死にな」





芹沢さんと名乗った
その人は、瑠花と紹介した
女の子を宥めながらそう言った。




「ほらっ、瑠花。
 再会したんだろ。

 月から舞い降りた衝撃で、
 記憶をなくしちまったのかもしれねぇな」



そう言って……瑠花さんに
言い聞かせるように告げて立ち上がらせた。




「舞、一緒に行こう。

 花桜も絶対、喜ぶから。
 私たち……絶対に三人揃って帰るんだから」





帰るんだからって……。





何処へ?










私は……何者?









義助さんと晋作さんのことは
凄く気になったけど、この人は私の過去を知ってる。




そう思ったら……少しでも失ったらしい
自分の記憶を取り戻したくて一緒に居たくなった。






「私、連れがいるんです。
 宿に置手紙だけ残してきます」




そう言って、その場を離れると
紙に私を知る人が見つかった旨を伝えて
暫く、その人の場所へ行ってきます。



そう綴って宿の主人へと文を託した。