その夢が。







それで……ちょっと
寝不足気味って言うか寝坊しちゃった。





「お祖母ちゃん、
 ごめんなさい」




慌てて謝罪して、
一礼すると走るのをやめて
早足で道場へと向かう。



道場では、すでに竹刀が
交わる音が響き渡る。





「失礼します」




声を張り上げて一礼すると、
お祖父ちゃんと、従兄弟の敬里(としざと)が
いる方へとゆっくりと歩いていく。




「敬里、
 それまでじゃ」
 



お祖父ちゃんの声が響いて、
敬里が静かにお辞儀をして面をゆっくりと外した。




「花桜、
 何遅刻してんだよ」


「煩いなっ。
 
 敬里なんかにそんなこと
 言われたくないわよ。

 アンタの方が今日は、
 たまたま早かっただけでしょうに」




憎まれ口を叩きながら、
座って、ゆっくりと面を顔に括り付ける。




汗臭い……その面を身に着けると
身も心も引き締まっていく。




「花桜、来なさい」



一礼した後、その言葉をきっかけに
声を張り上げて打ち込んでいく。



無心に打ち込んでいく間に
真っ白になっていく頭。



真っ白になればなるほど、
思考は澄み切って目の前の
打ち込みだけに集中できる。



「はいっ。
 それまで」



研ぎ澄まされた
聴覚がその言葉を
捉えたとき私はゆっくりと
構えの型を解いた。



「花桜、お前
 どんな神経してんだよ。
 
 じいちゃんと、30分も
 打ち込み続けるなんて」



呆れたような敬里の言葉に慌てて、
道場の壁に掛けられている時計を見つめる。





……本当だ……。





またやっちゃったよ。