「えっと…… それと同じ様な
 刀が我が家の家宝にあって」



そこまで言うと慌てて、
口を紡ぐ。



「山波くん、そうでしたか……。
 ここでの暮らしには慣れましたか?」

「あっ、はい。

 まだ土方さんの怒鳴り声とかは
 怖いですけど」

「彼は一本気なところがありますから。

 さっ、次は土方くんのところですね。
 早く持っていかないと、また怒られてしまいますよ」 



山南さんと一緒に居る時間は
何故か心が落ち着いて
ついつい長居してしまいたくなる。



「それでは、
 失礼いたします」



丁寧に一礼すると、
次は土方さんの部屋へと移動した。



「失礼いたします。
 遅くなりました。お飲み物をお持ちしました」



同じように一礼して、
部屋の主人に許しを請う。



「おいっ、山波。
 おせーよ。

 山南さんのとこで何、てめぇは
 油うってんだよ」



ドアが開いたと思えば
耳元で怒鳴りつける。



思わずお盆を持つ手を放して、
両耳を手で塞ぐ。




あっ、ヤバイっ。




飲み物こぼしちゃう。






ひっくり返しそうになった
飲み物を音もなく天井から舞い降りた
山崎さんがナイスキャッチで受け止めてくれた。




「ほいっ。
 
 花桜ちゃん、いくら土方さんが
 嫌いやいうても落としたらあかんで」




はいっ?




誰が、
嫌いって言った?






ギロっと睨む、
その視線が痛い。