次は山南さん。




「山南さん。
 山波です。

 お邪魔しても
 宜しいですか?」



飲み物を近くに置いて頭をさげたまま、
声をかける。



「山波くん。
 どうぞ、お入りなさい」



許可が出てゆっくりと、
一歩ずつ踏み出して部屋の中へと入っていく。



沢山の書物に囲まれた狭い部屋は、
今にも雪崩が起きそうなほどで。




「あの、お飲み物は?」

「あぁ、こちらに頂きます」



手を伸ばした山南さんの手に確実に手渡すと、
ぐるりと、部屋中の本を眺める。



「あの……。

 この本に潰されるっとか思ったことないですか?」



こんなの地震がきたら一発だよ。


地震じゃなくても、下から本を引っこ抜いたら、
全部、倒れて崩壊するよ。



よくこの人……こんなところで、
生活できるよね。



「珍しいですか?

 この書物の下敷きになるなどしませんよ」



山南さんが紡いだ、
その言葉を聞きながらさらに部屋の中を
見つめていく。



TVでよく見る新選組の羽織。




「あれっ、あの刀」


思わず指をさして、
その刀を見つける。


「赤心沖光【せきしんおきみつ】が
 どうかいたしましたか?」



聞きなれない名前に戸惑う。