義助さんに手を引かれて、
走り続ける山道。
道のない暗闇の中、
夜道を走り抜けていく。
「舞さん、すいません。
後、少し。
もう少しの辛抱ですから」
時折、後ろを振り返りながら
義助さんが私を気遣う。
「大丈夫です。
私、ちゃんと走りますから」
その山道を走り抜けると
晋作さんが、私を出迎えてくれた。
晋作さんは……何時もの旅装束。
行商の出で立ちで、私たちを待ち続ける。
「舞、今日のお前は薬屋の女房だ」
そう言って風呂敷の中に
支度された着物へと着替えさせられる。
木の陰に隠れて慌てて着替え終わると、
一行は、京に向かって山道を歩いて行った。
京に行く道すがら
風の噂が教えてくれた。
どこかで建設中の英国の大使館が
焼失したのだと。
深くは聞かないけど、晋作さんと義助さんたちが
もしかしたら絡んでるのかななんて思いつつ……
その心を隠したまま今を生きることを優先させる。
晋作さんと義助さんが
どんな人だとしても私は構わない。
この二人は、
私にはとても優しい瞳を
見せてくれるから。
この二人が居るから
私が生きていられる。
それは紛れのない事実だから。