「舞、もういい。
 泣かずに何も考えず休め。

 当面、この御殿場に宿を構える。

 俺は用があって少し留守にするが
 お前のことは、 ここの宿の主人にちゃんと頼んでおく。

 だから……舞は療養するといい」


そう言葉を残して、
晋作さんも義助さんも立ち上がって、
襖の方へと歩いていく。

一人になるのが、
こんなにも心細い。



「ちゃんと……ちゃんと迎えに
 来てくれますか?」

「あぁ。
 
 また迎えにくる。
 それまではゆっくりと休んでろ」



そう言うと晋作さんは、
誰かに呼ばれて部屋を出て行った。



「舞さん、ゆっくりと休んでいてくださいね」




そう言って出て行った二人は、
暫く、この場所に帰ってくることはなかった。


この宿の主人の介抱もあって、
熱は下がりある程度動けるようになった
私は主人に頼んで晋作さんと義助さんが
帰ってくるまで、宿の手伝いをさせて貰いたいと
頼んだ。




お世話になってる
お礼も兼ねて、
何かお渡ししたくて。



だけどそれにはお金が必要で。




必死にその思いを伝えたら、
主人は、快く快諾してくれた。






宿に泊まりに来たお客さんを、
部屋に案内し料理を運ぶ。


薪を割り、お風呂を沸かして
お客様の背中を洗い、背中を流す。




宿の手伝いをはじめて、
二週間ほどした深夜、その約束は果たされた。




「舞さん、起きてください」



寝ぼけ眼にボーっと見つめた先には、
義助さんの姿。




「今夜、出立します。
 
 晋作と合流するので支度を
 急いでください」




慌てて、支度をして
立ち去るのと同時にお役人さんたちが
宿の中に入っているのを微かにとらえた。