真っ白な白装束が
やけに脳裏に焼き付く。



顔の見えないその人は、
穏やかな微笑みと共に暗闇へと散って行った。










「花桜、起きなさい。
 何時までも寝てるんじゃありません。

 早く起きて道場に行きなさい」



突然、部屋の襖が開いてお母さんの声が耳につく。



「うるさいなぁー。
 起きてるよ」



寝起きの体をベッドの上に
ゆっくりと起こすと、腰まである
長いストレートの黒髪に手櫛を通す。



「煩いなぁっじゃないでしょ?

 花桜、今日は剣道の全国大会。

 試合の前に、
 お義父さまに手合せして貰うんでしょ。

 お義父さまが道場で待ってるわよ」


お母さんは、
そう言って部屋を出ていく。




慌ててベッドサイドの
携帯を引き寄せて画面を魅入る。





六時。





いやぁー。
お母さん、何で六時になんて起こすかな。



お祖父ちゃんとの
約束の時間じゃない?




慌ててベッドから飛び出すと
稽古着に袖を通して部屋から
慌てて飛び出す。




自宅から道場までは、
僅か五分に満たない距離。




お祖父ちゃんにお説教くらうのは
間違いないだろうなー。



そう思いながら、
慌ただしく家を飛び出そうとすると、
別の声が聞こえた。