「あっ、土方さん。
池田屋の報酬、私にまで有難うございました」
「別に礼を言われることじゃねぇ。
巻き込んじまって悪いな」
土方さんはそう言うと、また文机に向かって、
書きものに集中し始めた。
そんな後ろ姿に、静かにお辞儀をして土方さんの部屋を後にする。
舞が旅立つ時は笑顔で送り出そう。
旅に路銀は必要だよね。
私の給金、明里さんの高麗人参代にも使ったけど
少しなら舞の餞別に渡すことも出来るよね。
ちゃんと出来る事ある。
舞が自分がやりたいことをやろうとしてるんだもん。
親友の私が反対して足引っ張ってどうするのよ。
ちゃんと笑って送り出せ。
気合を入れるように、両手でバシンと両頬を打つ。
数日後、全ての旅支度を整えた舞は給金と餞別を路銀に、
私たちの住む屯所から旅立っていった。
皆に見送られながら。
舞、また会おうね。
ちゃんと、私たちが待つこの場所に無事に帰って来てね。
舞の手にも、私の手にも小さなお守り代わりの匂袋。
お揃いの匂袋のお香に、
私たち三人を魔から守ってくれますようにと
御祓いの意味も込めて。
この世界で作った新たな友情の証。
舞の旅立ちは悲しみだけじゃない。
新たな時間の始まりなのだと何度も言い聞かせながら、
姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
第二幕「運命を選ぶ刻」 完結



