禁門の変の後、舞は久坂玄瑞を供養したいと言いだし
私と瑠花はその願いを叶えるべく京の町を探し回った。


山崎さんの情報。
沖田さんの護衛。
そして斎藤さんからの情報。


それらを駆使して舞の願いは無事に聞き届けられた。

舞が祈る傍、私と瑠花も静かに手を合わせた。


どんな人かは正直わからないけど、
舞が大切だと言うその人が安らかに眠れますようにと。


お墓参りの後、いつもと変わらぬ日々が訪れる。


だけどいつもと変わらぬ日々の中に、
舞だけが何かを覚悟したような
そんな強い眼差しを秘めた瞳(め)をしていた。



朝食、朝の掃除、大洗濯。


いつもの家事を隊士たちに手伝って貰いながら
済ませた後、私は舞を鍛錬に誘う。




「舞、練習に付き合ってよ」



道場から木刀を借りて、
それを舞の元へと放り投げる。


舞は片手で、その木刀を受け止めると
ゆっくりと私の方へと構えた。



「誘ったの私だけど、ちょっと待ってね。

 最近、練習サボってたから木刀で素振りしても筋肉痛がね」


そう言うと私の木刀を瑠花に預けて庭の土に手をついて、
そのまま腕立て伏せを始める。


「瑠花、私のも持ってて。
 久しぶりだねー、その道場のメニュー」


舞も受け止った木刀を瑠花に預けて、
私の隣に掌をついて、腕立て伏せの構えに入る。


「まずは親指からだね」

「うん」


そう言うと同時に、親指だけを土につけて残りの四本の指は地面から浮かす。


「瑠花、カウントお願い」


私はそう言うと、体を浮かせて瑠花の声を待った。


「じゃあ行くよー。
 ひとーつ」


瑠花のカウントに合わせながら
基本的な動作をゆっくりと繰り返していく。


筋肉の使い方を意識しながら、
ゆっくりと筋の動きも意識しながら。


道場のメニューを終えた頃には汗がびっしょり。


舞と私は倒れ込むように地面に転がる。


そんな私たちに、井戸水で濡らした手拭いを手渡してくれる瑠花。

あっちの世界でもいつもそうだった。


二人の練習を時にマネージャー的役割で見守ってくれた瑠花。
そんな時間がなんだか懐かしかった。


その後、舞と本格的に打ち合っていく。



木刀と木刀がぶつかる音が庭に響いていく。



「えいっ、やぁー」

「花桜、まだまだ今度はこっちから行くんだから」

何度も何度もぶつかっては間をとり、
ぶつかっては、次の一撃を見定めていく。


「すきあり」


舞の声と共に私の体に触れる木刀の重さ。