義兄たちも会津も新選組も悪かったかもしれない。



だけど……だからって全てが悪いわけじゃない。
そう思えるから。



お寺に顔を出してから黙々と炊き出しを手伝っていく花桜と瑠花。
そんな二人の後ろ、私のモヤモヤが消えていくことはない。



「何言ってるの?
 違うでしょ。
 
 新選組が悪いわけじゃない、会津だけが悪いわけじゃない。
 長州だけが悪いわけじゃない。

 時代の流れって言ってしまったら、それまでだけど誰もが犠牲者なの。
 どっちが悪いとか、誰がやったとか本当は関係ない。

 だけどそうしないと、自分の心が壊れるから。
 悲鳴をあげるから。

 でも失った存在はどんだけ誰かを恨んでも、憎んでも帰ってこないんだよ。

 帰ってこないの。
 残された私たちは生きてなかきゃダメ。

 だから……ちゃんと未来を見て、歩き出して。
 人の力って大きいの。

 皆でまた、京の町を元気にしようよ。
 私も力になれるように手伝うから」



溜まりかねた花桜が順番に食事を振る舞いながら
声を張り上げて、町の人たちに話しかける。



こおばってた町の人たちから、少しずつ未来を歩き出すための
声が聞こえ始める。


少しずつ動き出した声は、
やがて広がり渦を巻くように次々と切り開く力を巻き起こす。




花桜……、
何時もの花桜に戻ったね。




私の前を走り続ける、そんな花桜の勇ましさに
懐かしさを覚えると共に力を貰う。


ちゃんと私も自分がやりたいことを後悔がないように確実にやり遂げたい。
炊き出しが終わった後、またいつものように屯所に戻って夕食の準備。


そして自由時間。
私たちは一か所に固まって座談会。


その中で私は自分が思ってることを伝えた。



『私、義兄を供養したいの。
 ちゃんと亡骸の行方を探したい』


「そうだね。
 久坂さんもゆっくりと眠りたいよね

 舞の願い、また叶えよう。
 ちょっと私、総司を捕まえて来るよ。

 巡回当番じゃなければ手伝ってくれると思うんだ。
 
 鷹司邸まで。
 とりあえず、まずそこでしょ」


瑠花はそう言うと、急いで部屋を飛び出していく。



「山崎さん。
 居るよね……降りて来てよ」


瑠花が飛び出すと、
今度は花桜が天井に向かって声をかける。


「なんや、花桜ちゃん気づいとったんかいな」


そう言いながら姿を見せるのは山崎さん。



「気が付きやすいように
 気配出してくれてたらわかるでしょ。

 それで……用事何?」

「もぅー、花桜ちゃんは相変わらず
 つれへんお人なやぁー」


次の瞬間、山崎さんはコロリと口調が変わって
なよなよっと装う。


そしてまた何時もの調子に戻って
一つの情報を提供してくれた。