義兄の死から数日が過ぎた。

鷹司邸。


あの場所で、義兄と一緒にこの命が果てるなら、
それでもいいとさえ思ってた。


だけど瑠花と沖田さんによって生かされた私。

義兄の分まで、生きてこの世界を見届けたい。


流されて生きるのではなく、私自身が全てを決断して、
力強く歩いて行きたい。

義兄が居なくなった歴史も事実も変わらない。



変わらないけど……悲しいけど、
義兄はいつも近くに居てくれる。


そんな風にすら思えて、今穏やかに過ごせるのは、
多分、瑠花が言った『見届けること』。


その意味と役割が、
かなり大きいのかもしれないと思えた。



朝、自分の部屋から外に出て庭へと下り立つ。



空を見上げながら深呼吸すると、
眩しい太陽の光が私に注ぎ込む。





ねぇ、義兄もう泣かないから。

ちゃんと貴方を探し出して助けるから……。




空を見上げながら、小さく話しかけた。

キイっと音を立てて勝手口のドアが開く。
慌てて、その方向へと視線を向けた。


「もういいのか?」



ゆっくりと外から朝帰りの斎藤さんが
私の方へと近づいて問いかける。




「はいっ。

 立ち止まっては居られませんから。
 あの……隊から勝手に抜けて別行動してすいませんでした」

「納得できる別れが出来たのか?」


更に言葉を続ける斎藤さん。


納得出来る別れ。


そう言われると、何が正しかったのか、どうすれば納得出来たのか
そんなものは即答できるはずもなくて。



「納得出来るかどうかは、正直わかりません。
 ただ……見届けることだけは出来ました」

「そうか」

「あっ……あの、近藤さんや土方さんに謝りに行く方がいいですか?
 隊を離れて……」

「行く必要はない。
 局長にも副長にも話はすでに通してある。

 加賀は俺の指示で別行動した。
 その別行動の共に、岩倉が付き添い、沖田さんが護衛として付き添った」



さらりと返って来た言葉に私は絶句する。



また……助けてくれた……。
この人って?