屯所を囲むように集まっている、
大勢の京の町人(まちびと)。


椀によそわれた味噌汁を持ち、おむすびを頬張る人たちの姿は、
疲れ果ててるようにも見える。


そんな人混みを掻き分けて屯所内に入った後も、
そんな町の人たちで溢れかえってた。



「瑠花、お帰り。

 お待たせしました皆さん、
 まだありますから慌てないで必要な分だけとってください」



何時の間にか元気になってた花桜が、
お盆一杯に、おむすびを作って振るまってる。


そんなおにぎりに次から次へと手を伸ばしていく町の人。



良く目を凝らしてみると、傷を負ったらしい人も居て
そんな人たちの腕や足には真っ白な布が当てられていた。




「瑠花、加賀を部屋に寝かせて来たよ」



私が花桜と話してる間に、舞を部屋で寝かせてきてくれたらしい総司は、
肩をクルクルと回しながら私の方へと近づいて来た。


「総司、あちらは終わったのですか?」


奥から手当てをしていたらしい道具を片手に姿を見せたのは山南さん。


「すいません。
 山南さん、僕……本来は留守番組でずっと此処に居るはずだったんですけど」


その先を濁したまま総司はじっと私の方を見つめる。


「すいません。

 山南さん総司は悪くないんです。

 舞と私が出掛けたいところがあって、二人じゃ危険かなーって、
 総司にボディーガード……あっ、護衛?を頼んで」


慌てて一息で言い返す私に山南さんは穏やかな眼差しのまま微笑んだ。


「咎めることはしませんよ。

 岩倉君と加賀君、お二人の目的は無事に果たされて帰って来た。
 そう思って宜しいのですね」


そう問われた質問に私はゆっくりと頷き返した。


「では岩倉君、宜しければ山波君と一緒に被害にあわれた
 方々のお世話をして頂いて宜しいですか?

 総司、寺の和尚に難民たちの一時受け入れを頼めますか?」


その後は、山南さんに指示されるままに避難して来た人たちにご飯を振舞、
手当をしてお寺へに依頼して休める場所を手配する。


屯所前、屯所の庭で座り込んでいた人たちを
お寺に案内して、休めるように支度を整えた後、
私は総司の姿を探し求める。




気になるのは、何度か聞く総司の咳。




ケホケホっと咳が聞こえる度に、
肺結核を発症したの?ってドキっとしてしまう私がいる。



ちゃんと確認しなきゃ。





お寺の周囲を総司を探して走り回った私の目には、
戦が起こった御所の方角をボーっと見る総司の姿。



赤々と空を焦がす大火が遠くの方で確認できる。