私たちの時代で言い伝えられる禁門の変が終わった。

総司に協力して貰って久坂玄瑞を舞に看取らせた。


そんな歴史、私たちの世界には伝わってない。
史実を壊してしまったかも知れない。


だけど……今、それを確かめる術はこの世界にない。

ただ私たちが生きるこの場所【今】が、
リアルであると言うこと。


そしてそれだけが、私たち三人にとっての真実。

鷹司邸に久坂玄瑞が居てくれたのは、
ある意味奇跡に近かったのかもしれない。


だけどその奇跡が舞の願いを聞き届けることが出来た。

そう言う風にも考えられるのかも知れない。


そう感じる私も確かに居る。



だけど……あの場所で舞の命を落とさせちゃいけない。
そう思った私の心は大切にしたいから。


久坂玄瑞たちを苦しませないように、
その命を自らの剣で奪った総司。


総司の表情は決して変わることはなかったけどチクリと痛む心。

また悲しい運命を背買わせてしまったよね。


私が言いださなければ、
総司は二人の命を奪うことはなかったかも知れない。


屯所の留守番役だったか、近藤さんや土方さかたちと
何処かに戦に出ていたかはわかんないけど、
今とは違った未来を生きてたかもしれない。


なのに……総司は、私の望みを叶えて立ち止まり続けることなく、
あの場所から私と舞を連れて、こうして屯所へと送り届けてくれてる。


気を失った舞を背中に負ぶって、私の隣をゆっくりと歩きながら。



「総司……ごめんなさい」



暗闇を二人歩きながら小さく呟く。

ふと立ち止まった総司に釣られるように私も足を止める。



「瑠花は優しいですね。
 気に病むことはありません。

 これが僕の生き方なんです。

 未来に伝わる瑠花の知る時代の僕がどんな存在なのか、
 何をしてどう生き抜いたのか僕にはわかりません。

 瑠花が教えてくれた、労咳になって倒れると言うこと以外
 僕には知る由もありません。

 ただ……どんな未来になっても僕は僕で在り続けたい。
 それだけは今の僕の確かな思いです」


総司はそう言うと、
またゆっくりと歩き出した。


全てを見透かしているように振る舞い続けた私が、
何故か総司に全てを見透かされてしまった錯覚に陥った。



再び歩きながら、総司の整った横顔を眺める。



沖田総司と言えば気になるのは結核。



結核になる総司の歴史が、この場所で訪れるのかどうかも
わからないけど……気にならないはずはない。


ドラマだけの物語の中だけじゃなく、
沖田総司と言う一人の男性を好きになってしまった今、
何よりも気になってしまう出来事になってた。



「瑠花、少し急ぎましょうか?
 屯所の方が少し騒がしいみたいです」



そう言って私を振り返ると、
総司が歩くスピードを挙げていく。



急いで向かった屯所の前には予想外の光景が広がる。