新選組に敵意を感じていた京の町人たちの、
心を少しずつ解していく山南さんによる、
歩み寄りのほどこし。




ボランティア?
罪滅ぼし?




真っ赤の炎は三日間暴れて、京の町の殆ど焼き尽くした。


避難民である町人たちを寺で過ごせるように住職に交渉して移動させ、
僅かな期間でも落ち着ける場所を提供すると、
今度は屯所に戻って炊事場を守るものと、寺に残り町人たちの世話をするものと別れて
慌ただしく動き続ける。


そして一段落した時、隊士たちと共に
屯所の自分の持ち場へと帰ることが出来た。


「山南さん」


次の炊き出しの準備の合間に、山南さんへと声をかける。


「山波君、貴女も良くやってくれました。
 何とか乗り越えたようですね。

 京を守る存在である我らが、京を戦火に巻き込んでいく。

 世の中の無情は辛いですね。
 私も少し休みます。

 山波君も、お願いしている作業が一段落したら少し休みなさい。 

 あぁ、それから……良く頑張りましたね。
 山波君も自分の芯を見つけたように感じました。

 明日からも寺に避難する人々のお世話も頼みましたよ」
 

「はいっ。

 私だけじゃなくて、帰ってきたら瑠花や舞にも手伝って貰って
少しでも早く、傷ついた町が回復するように私も頑張りたいです」


そうやって答えると山南さんは、
柔らかに微笑んで立ち去っていく。


山南さんの背中を見送りながら、
その穏やかな時間は長く続かないのだと知る。



山南さんの……
ご先祖様の試練は多分少しずつ忍び寄ってきてる。



屯所の仕事に復帰した私は、
その頃から屯所の家事・寺でのボランティア。


そして山南さんが身請けして住まわせるようになった、
明里さんの家へと足を運びながら過ごすようになる。



そうやって忙しい日々に追われながらも、
充実した時間を過ごしてる中、一つの事件が起きる。



池田屋事件の報奨金が出たのを受けて、
隊士たちに給料が支払われた。



無論、池田屋事件に出動する形になった私にもかろうじて給料は出されたものの
屯所を守る者たちには、その報奨金は支払われない。



その時、池田屋に踏み込んでいない山南さんにも報奨金は支払われなかった。


山南さんは、それでも穏やかに微笑んで明里さんの元や、
寺のボランティアを手伝っていたけれど屯所内には不満の声もあがりはじめる。



多くもらったもの、貰えたけれど殆ど貰えなかったもの。

全く貰えなかったもの。


隊士同士のいざこざも絶えず、屯所内の雰囲気は決して良いとは思えない。
不穏な気配が確実に忍び寄ってきているように感じた。