『会津より新選組に出陣の命がくだった。
 これより我らは御所の警護に会津藩・薩摩藩と共にあたる』



近藤勇の声が屯所内に力強く響く。


その声に呼応するように湧き上がる隊士たちの声。


そう……私にとっての大切な時間が始まる。


歴史を変えることは出来ないかもしれない。


だけど……私の夢を叶えるために、
彼らを利用することは今の私には出来るかもしれない。



私は新選組の一員になったつもりは最初からないから。



彼らと共に戦場へ向かうのは、その方が好都合だったから。


彼らを利用して、自分の願いを叶えたい。


裏切り者として、見つかってこの身を斬られても
義兄たちと最期、この命を終わらせることになったとしても
後悔だけはしたくないって思うから。


義兄たちを追い込んだ彼らに対する私なりの復讐。



そうやって言い聞かせることが出来れば、
単独行動もとりやすい。


私を最初にこの場所で受け入れてくれた
斎藤さんに迷惑をかけたとしても
許される投げ道になるような気がして。



『違う……。
 間違えないで、舞。

 復讐何て望まない。
 望んでない。
 
 義兄も晋兄もそんな人じゃない。

 ただ見届けたいの。

 私自身が自分を納得させたい……ただそれだけ』



何処からともなく内側から湧き上がる声に、
殺伐としていた暗示が音を立てたように崩れていく。




「おいっ、加賀。
 どうした?」



隣から聞える声に、はっと現実を取り戻す。


「すいません。
 大丈夫です。

 今から出陣ですよね。
 私たちは、何処に向かうんですか?」


近藤さんの言葉は続いているものの、
私の耳には、何を言っているのか入ってこなかった。



「舞、気張らなくていいから」


そう言って私の近くに姿を見せたのは、
初めて見る男装の装いの瑠花。


「今回は私もついてくわよ。
 優秀なボディーガードが付いてきてくれるもの」


そう言って瑠花は私に微笑みかける。


「大丈夫。一人には絶対にさせないから。
 泣きたくなったらちゃんと私が傍に居るから」


今から起こりうる出来事がわかっている
瑠花だからそこ、気遣える言葉。