そして何度も何度も、
私をそうやって迎え入れてくれた
義兄と晋兄の声。


僅かな言葉が、
私の中でシンクロしていく。



「義兄……、晋兄……」

「よしにい?
 しんにい?」



繰り返された瑠花の声に私は自分が心の声ではなく、
何時の間にか、声として発していたことに気が付く。



思わず両手が口元に伸びる。



そのままゆっくりと視線を、
瑠花へと移動させた。



「舞、よしにいって……
 まさか久坂玄瑞?」


そうやって鋭く、言葉を切り返す瑠花に
私はただ頷くことしか出来ない。


「そう、頷くだけでいいよ。
 ここは新選組だもん。

 じゃ、しんにいって言うのは高杉晋作?」


質問してくる瑠花のトーンも
最初の一声目よりは、小さくなっていく。



「って、舞……なんで知ってるの?」


瑠花は、私の方に今まで以上に体を近づけて
小さな小さな声で言葉を続ける。


「私……長州にいたから」



瑠花になら……話してもいいかも知れない。


歴史に詳しい瑠花になら、
歴史を変える方法が見つかるかもしれない。


そんな望みを握りしめて。



「義兄と晋兄は私にとって
 お兄ちゃんみたいに存在なの。

 隊を抜け出して、会ってた。

 二人を助けたくて。
 蛤御門なんてさせちゃいけないって思ったから」



そうやって吐き出した言葉に、
瑠花は私を宥めるように背中を摩った。



「そっか……。
そうだよね、辛いよね。

 現代から来た私たちは、
 この先に起こる未来を知ってる。

 大切な人が見つかれば見つかるほど
 助けたいって思うよね」



そうやって言葉を続けた瑠花は、
お寺の方角へと視線を向けた。