だから……一人で抱え込んで悩まないで、
苦しんでないで、皆に吐き出してよ。






花桜がそうなったのが、池田屋事件の後だから
多分、その時に何かあったんだよね。



花桜が壊れてしまうほど、
怖い出来事が。






私が傍にいって花桜がそれ以上辛くならないなら、
花桜のその辛さ、私も分けて欲しいって私も抱きたいって思ってる。


それがどれだけ身勝手なことかもしれないけど、
そうすることで、『花桜に背負わせたと言う罪悪感』から
私も解き放たれるような気がするから。



自分自身を少しでも
許せるような気がするから。





そう思う気持ちを感じながらも、
まだ何も行動出来ないでいたある日、
私と総司が過ごす部屋の前を、
花桜が土方さんに引きづられるように通っていく。



嫌がってる花桜に無理やり何かをさせようとしている
土方さんから花桜を守りたくて、
思わず部屋を飛び出して二人の前に立つと、
通せんぼするようにゆっくりと手を広げる。



「じゃますんじゃねぇ。
 どきやがれ。

 そこのてめぇらも、
 見せもんじゃねぇぞ」



私に怒鳴り散らした後、
土方さんに引きずられる花桜の姿を心配して
集まってきた隊士たちをも一喝する。



土方さんの声に、隊士たちは散り散りに
自分たちの持ち場へと戻っていった。



「瑠花、君もこっちにおいで。
 山波の事は土方さんに任せておけばいいから」



総司は二人の前で手を広げ続ける私に、
愛刀の手入れをしながら静かに告げた。



「……総司……」


「瑠花、山波の事は土方さんに任せておけばいいよ。
 あの子は、まだ覚悟が足りないんだ。

 口ではどれだけ覚悟してるって言葉にしていてもね。

 心の覚悟は足りないんだよ。

 そう、昔の僕みたいに……。
 これは山波が自分で気が付いて自分で乗り越える問題なんだよ。

 だから……通してあげなよ」




総司はそうやって私を諭すように告げると、
私は広げていた手をゆっくりとおろして廊下の隅に身を寄せた。



土方さんは、また花桜を引きずるように
引っ張りながら歩き始める。


そんな二人の後をゆっくりとついていくと、
花桜は道場の中へと土方さんによって放り込まれた。

道場の扉が全て締め切られて、
中の音だけが外へと響く。

打ち付けている木刀の音と、怒鳴り続ける土方さんの声だけが
その周辺には木霊し続けて居た。


どれだけ長い時間が過ぎていただろうか。


次に閉ざされたドアが開けられた時、
土方さんの腕の中で、
ぐったりと意識を失って眠り続ける花桜を見た。



「まだ居たのか」



土方さんはそれだけ告げると、
それ以上は何も言わず、花桜を何処かへと連れて行く。