池田屋事件から数日が過ぎた。


体に熱がこもりすぎて、
暫く床に臥せっていた総司も
ようやく熱が下がって
今まで通りと変わらない生活を続けていた。


朝から隊士たちに稽古をつけて、
壬生寺に行っては私の日課である、
鴨ちゃんとお梅さんのお墓参りに付き合って、
そのまま境内で子供たちと走り回る。




寺に集まる子供たちも
総司が行くと、
凄く嬉しそうに集まってくる。





そう……この時間だけを切り抜いてしまえば、
あの池田屋事件が起きた後だとは
思えないほど、穏やかな時間だった。



あの日から変わってしまったのは
この屯所内に、
今もまだ舞の姿がないと言う事。



舞が長州の奴と居るところを見たと証言した
隊士は、寝返ったのではないかと騒ぎ立て
私の心を逆なでした。


そんなざわめきを抑え込んでしまったのは、
斎藤さんだった。



決して口数が多いとはいけないその人が

『加賀には、俺が用事を申し付けた。
 それに不満があるものは前に出ろ』


そう告げた途端に、屯所内をざわつかせていた声は
ピタリと止んだ。




それでも今も、
舞の姿が見つかることはなかった。




舞だけじゃない。



花桜もあの日から、様子がおかしい。





決して誰とも視線を
あわそうとしない花桜。


何かに怯えているみたいに、
朝、いつも以上に早くから屯所内の掃除をして、
炊事場に入る。



炊事場では、手が震えて包丁すら上手く使えなくて、
それでも誰かに任せようとしない花桜の手から
井上さんが、野菜と包丁を抜き取って食材を切っていく。



いつもはテキパキと行動できる花桜が、
あの日からずっと様子がおかしかった。




花桜の異変は、他の隊士たちも
やっぱり感じ取ってるみたいで、


必死に掃除をしている花桜を見ては、

『手伝いましょうか?』っと声をかける隊士たち。


必死に洗濯をしている花桜を見ては、

『干します』と手伝い始める隊士たち。




そんな隊士たちの言葉に、何時もは声を返しながら
一緒に作業をしていく花桜の反応がない。