あの日から、
ずっと血の色が消えることはない。


池田屋で自分の意思で倒さなきゃ、
殺さなきゃって思って沖影を振るった、
剣の重みと肉を突き刺す感触。

切っ先が皮膚に触れた時に、
スーっと流れ出す血が広がっていく筋。

そして……返り血が肌に触れた感覚。





必死に振るい続けたそれは、
紛れもなく、殺人と同じ。




殺人……、人殺し。





沖田さんを瑠花に預けて、
屯所に戻った私が真っ先に直行したのは井戸。



井戸水を汲み上げて何度も何度も手を洗って、
着物を洗って、山南さんから借りた羽織を洗って。



どれだけ手洗いを繰り返しても、
その血の色はなかったことにはならない。





フラフラになるまで洗い続ける私に、
山崎さんが井戸から引き離して、
私の部屋へと連れて行った。




一人、部屋に閉じこもって
灯り一つつけることのない部屋の片隅で
ボーっと過ごし続けた一晩。



眠ろうとしても、
同じ感触と景色が何度も何度も脳裏に思い浮かぶ
今、安眠なんて出来るはずもなく
朝になると、その自室から逃げ出すように
一日の予定を機械的に消化していく。




休んでる暇なんてない。


逃げ出す場所もない。


自分で決めて
私は人を殺したんだから。






どれだけ洗っても、
掌の紅い血は消えてくれない。