花桜……瑠花……。

私……二人は好きだけど、
やっぱり許せないよ。


私の大切な人を守りたいよ……。






悔しさと悲しさと、いろんなものが
ぐちゃぐちゃになって押し寄せてくる後悔の念。


罪悪感。








晋兄……。






そのまま意識を手放すように、
その場に倒れ落ちた。









「舞……。

 舞、大丈夫か?」





声……。
懐かしい……声が聞こえる。




ゆっくりと目を開くと、
額に触れる掌。




「……晋兄……」

「目が覚めたか?」




目が覚めた時、そこには私がずっと逢いたかった晋兄が
静かに座ってた。


布団の中から必死に手を伸ばして、
晋兄の腕をゆっくりと掴み取る。


目の前に居る晋兄が、
消えてしまいそうで怖いから。



私が伸ばした手を、
ゆっくりと握り返してくれる晋兄。 



「やっと見つけた……」



晋兄はその後、
私の髪をゆっくりと撫でながら続けた。



「あぁ、桂さんから聞いた。
 舞がオレを探していると」

「……ごめんなさい……。

 私……晋兄と兄の大切な友達守れなかった。
 花桜と瑠花が居たから私は新選組に暫く居たのに。
 こうなる前に、もっと晋兄たちに出来ること
 あったと思うのに」



そう……スパイとか……。




この場所に居るから、
今はそう言う言葉が出てくるけど、
あの場所に居た時は、
斎藤さんが何かと気にかけてくれて、
その人を裏切ることも出来ないと
思ってしまう自分の心も知ってる。



それでも……
そう言う言葉を吐き出してしまう私は
ズルいね……。



「栄太郎が死んだのは残念だよ。
 
 ただアイツは、時を見誤ったんだ……。
 馬鹿なヤツだよ」 



晋兄はそう言って呟くと、
静かに目を閉じて彼を思い偲んでいるみたいだった。