その人たちは、屯所に帰ってきた途端に、
次々と用意していたお茶を飲んだり、
ご飯を食べたりとそれぞれの時間を過ごしている。




だけどまだ……総司の姿はない。





総司を迎えに行くように、屯所を飛び出して
隊列を逆走していった先、戸板らしきものに寝かされて、
ぐったりとしている総司の姿が視界に映る。



その隣には花桜が寄り添うように歩いているけど、
花桜の様子が何故かいつもと違って見えた。



そしてその隊列の中に一緒に屯所を出たはずの、
舞は何処にもいない。





「花桜……」




ようやく紡ぎだせた言葉は、
花桜の名前だけ。




花桜は一瞬だけ私の顔をチラリと見つめると、
屯所に戻った途端に、足早に何処かへと走り去った。





花桜を追いかけることも出来ないまま、
戸板に寝かされて運ばれている
総司について、総司の部屋へと向かう。



総司の布団を敷いて、
着替えを手伝って……。




花桜が作ったらしい、
経口補水液を今も時折、口に含ませながら
汲んできた井戸水で、
熱い体を拭いて気化させていく。






お帰りなさい
……総司……。









総司が帰って来てくれた。







それがこんなにも私にとって現実的で、
大きな出来事になってるなんて想いもしなかった。






そして……今の総司の様子から、
池田屋で倒れた総司の原因が、
労咳ではないことがわかって内心ほっとしてる。








叶うなら総司だけでも助けたい。






この先、総司の身に起こる
出来事はあまりにも、過酷すぎるから。






そんな彼の心も、
彼の体も抱きしめて守ってあげたいから。










この世界に留まり続ける間は、
私の身に必ず、
訪れ続ける待つ者の戦。





その戦は……
あまりにも辛すぎるから。










舞や花桜のことが気になりながらも、
やっぱり私は、
今は総司の傍から離れることが出来ないでいた。