名前を呼んだあと何も言ってこない山南さんに、
私は思いを吐き出すように、
今の私自身の行動を正当化するように訴え続ける。




だって……そうでもしないと……
私が壊れてしまいそう。





歴史を知っていても、
その歴史通りの事が今も起こるかなんて
誰も知らない。



どれだけ歴史を知っていても、
これから私が知る出来事が、
私の知識通りに運ぶなんて保証は
何処にもないって事に
気が付いてしまったから……。





そして……思った……。





待ち続けるだけの人は大変だなーって。




ドラマの中では、待つだけの人は
殆ど描かれることはない。



だから……自分がその立場になるまで、
気付こうともしなかった。



その立場を知ってしまったから。





待ってる者もまた……
その時間は、戦と同じなのだと言う真実。


決して目立つことのない、
一人だけの孤独な戦い。



待つ人が帰ってくるまで、
決して終わることのない見えない戦い。







誰にもわからないんだから。




私のこんな不安な心なんて。






そう思って自分の行動を今以上に自分の中で、
正当化させて行こうとした時、
目の前のその人は、ゆっくりと口を開いた。




「待つ身は貴女一人ではありませんよ。

 貴女が総司の事を本当に思うのであれば
 少しでも体を休めることです。

 総司が帰って来て安らげるように。

 花桜君が帰って来て貴女と今を感じあえるように」





一刀両断的に突き付けられた言葉。




待つ身は私だけじゃない。







その言葉に、
私も少しだけ周囲に意識が向けられるようになる。





山南さん。



池田屋事件に出陣していない彼は
表舞台でなかなかドラマとかでも
取り上げられることはないけれど、 
それでも腕を負傷して待ち続ける彼自身も
私と同じように、不安な気持ちを押し隠して
戦っているのだと感じた。




花桜が羽織ってた、
だんだら模様の羽織。



その羽織は山南さんから託されたもの。