そのまま山崎さんは私に合図を送って、
近藤さんの元へと近づいていく。




「山波君、何故君が?」

「伝達で走って来てたところ、
 オレがそこで保護しました」


シレっと紡ぐ山崎さん。


「今、島田に副長の元へ行かせました。
 池田屋です」


静かに告げられた途端、
近藤さんは驚いたような表情を見せた。



「山波くん……」

「近藤さん、池田屋なんですね。
 場所がわかったら、後は……」



近藤さんの隣、
沖田さんは自分の刀にゆっくりと手を伸ばした。



「池田屋に向かう。
 山波君、君は此処に……」

「嫌です。
 私も行きます」




近藤さんも私を置いて行こうとする。




それを断固、跳ね除けるように言い放つと、
沖田さんがゆっくりと近づいてきてくれた。



「彼女の腕も多少は使えるでしょう。
 自分の命は自分で守るんですよ。
 どうしても危ない時は僕が助けてあげますよ」



そんな風に笑みを携えながら。




だけど……彼は倒れる。




沖田さんも瑠花から、その未来を聞かされてると思うのに
どうしてそんな風に笑ってられるんですか?




そう思いながら、
私は沖田さんをじっくりと観察していた。





咳はしてない……。





だったら、彼が倒れる原因は
この湿度?
暑さ?






蒸し暑さを感じる空気は、
額のハチマキを汗でずらしていく。



首筋の汗を思わず、着物の袖で拭いながら
池田屋のへ方へと向かった。