土方隊からも舞からも離れて、
ただひたすらに
駆け抜けた京の町。

だんだら羽織を身に着けて、
店を順番に検めている
近藤さんたちの姿が視界に入った。




……良かった。
まだ始まってない……。




安堵する気持ちと同時に、
見つかっちゃいけないと思う気持ちから、
私の追跡姿も怪しくなる。



コソコソと影に隠れながら、
新選組の後をつけていく。




「花桜ちゃん、みっけ」



そう言って、足音もなく私の背後に
降り立ったその人は聞きなれた声を出した。


「山崎さん」

「今のオレに背後とられるようやったらあかんで」

そう言った山崎さんの表情は仕事人の顔立ち。


普段の私が知る山崎さんみたいに
チャラけたところが全くないそんな姿。



「岩倉が副長たちに話した未来の出来事はオレも聞いた。

 だからここにおるんやろ。
 花桜ちゃんは?」

「……はい……。
 池田屋で事件が起こるから」

「今、島田が副長のところにその報告に向かった。
 オレも今から隊長にその旨を告げに行く」

「だったら……私も……」


だったら私も行く。


「花桜ちゃん。

 オレはな……花桜ちゃんには……。

 それに副長も……」




何か紡ぎかけた山崎さんの言葉は
そのまま続けられることはなかった。




「私は見届けるんです。
 山南さんの為にも親友の瑠花の為にも」



きっぱりと言い切った私に、
山崎さんは、『足手まといになったらあかんよ』
そうやって呟いた。