桂小五郎。




「あの……。

 桂先生って、桂小五郎?
 晋兄と義兄が話してた……。

 私、舞です。

 御殿場の旅の時、一緒に同行した
 舞です。

 名前聞いたことないですか?」



縋るような気持ちで、
声をかける。




「晋作と久坂を知る者。
 君が僕に何用かな?」



静かに告げられた声。




「逢いたいんです。

 晋兄に……だけど長州の人たちは京から締め出されて
 大っぴらに声を出して探せないから。

 晋兄たちから名前を聞いたことがある人を
 探してたんです」




直接、名前を聞いたわけじゃないけど
桂さん。



貴方だけが今の私を
晋兄に結び付けてくれた人だから。





「桂さん。
 池田屋が……」



そう告げられた言葉に、
新選組が池田屋に踏み込んだのだと知った。



歴史は変わることなく、
進み続けてるのだと。





「ここは危ない。
 君もついてきなさい」



桂さんはそう告げると、
私の腕をくくっていた紐をほどく。




「長州が京においてどういう状況下にあるかは
 君も知ってるの通りだ。

 少し安全な所へ逃げる。
 君も来なさい」




告げられるままに、私は桂さんたちと、
闇に紛れるようにお屋敷通りを駆け抜けると
何処かの大きな屋敷内へと身を潜めた。







晋兄……。








もうすぐ貴方に会える。
そう信じていいよね。