屯所を出た私は、花桜と一緒に土方隊の隊士たちと
四国屋の方へ向かう。
四国屋へ向かう道中も、花桜は、土方さんに食いつくように
何度も何度も、『池田屋だっているってるでしょ』って
怒鳴りあってた。
そんな花桜の声を黙らせようと、
土方さんは顔の口に手をあてる。
もごもごと、
伝えられなくなった声。
「おいっ。
加賀、コイツを黙らせろ。
他の隊士の邪魔になる」
そうやって、土方さんは
花桜の体を投げよこすように
私の方へ預けた。
隊士の列の最後尾。
私の隣を歩く、
花桜は今も機嫌が悪い。
「あのわからずや。
どうしてくれよう。
ちょっとさ、私思うんだけど
時代劇って、あの人美化しすぎだよ。
あの堅物、頑固親父っ!!」
「頑固親父って、花桜……」
「私、池田屋に行く。
瑠花と約束したの。
沖田さんの傍に居るって、
だから……どうにかして、離れよう?
この時代に来て、ずっと私たちは蚊帳の外。
よそ者だって、この時間にこんなにも
長く関わってるんだよ。
ちゃんと……生きたいよ」
噛みしめるように、
花桜は声を震わせながら吐き出した。
「花桜…… 花桜は……現代にいる、
お父さんや、お母さん。
師匠や、おばあ様に
逢えなくなってもいいの?
蚊帳の外だと危険は少ないよ。
あの人たちと一緒に行動して、
隣に立つって言うのは現代に帰れなく危険もある。
それでもいいの?」
現代には、花桜の従兄弟である
敬里(としざと)がいる。
敬里は……花桜が好きなんだよ。
花桜はそんな気持ち、
鈍感すぎて何も気が付いてないけど……。
「帰る為に戦うの。
これはこの世界に留まるための戦いじゃない。
私の世界に帰るための戦いだから。
三人で帰るって言った最初の誓いは忘れてないよ」