やっぱり……キツイな……。




どことなく……お祖父ちゃんの若い頃に面差しが似てる
ご先祖様に面と向かって拒絶されると。







膳を手にして、炊事場に辿り着くと、
泣きながら入った私に、
瑠花と舞がびっくりして近づいてくる。





「「花桜、どうしたの?」」




食器を流しへとつけると、
そのまま首を横に振って
食器へと手を添える。



「花桜、何隠してるの?
 山南さんに何かあったの?」



瑠花は、他の作業に没頭して逃げようとする私を
引き戻すかのように現実を突き付けた。



「花桜っっ!!」




必死にこらえてた涙が、
止まらなくなった……。




その場で崩れ落ちた私に、
二人は優しく肩に手を添えたり、背中を摩ったり。



落ち着くのを待っててくれた。




「ねぇ……。
 山南さんに昔みたいに隊士の皆と触れ合ってほしいの。

 せっかく会えたご先祖様なのに。
 私……何も出来ない……。

 腕を怪我して、思い通りに動かなくて
そんな現実が、多分……そうさせてるって思えるのに
 何も出来ないよ。

 私には無理なのかな……」
 




ただ傍に居るだけじゃ……
何もやってないのと一緒だよ……。




その人の痛みも、
苦しみも変わることなんて出来なくて
その人が苦しみながら必死に吐き出した言葉に
傷ついて……。



こうやって泣いて……。
バカみたい……。





「花桜、花桜の思いはちゃんと
 山南さんに届いてると思う。

 辛い時、誰かが傍に居てくれるって
 思えるだけで、本当に力になるんだよ。

 その感謝の言葉は、なかなかな伝えられないけど
 山南さんも花桜には有難うって沢山伝えたいと思う。

 だから……そんなに自分を責めないで。

 花桜が辛そうに悲しんでたら、
 今以上に、山南さんも辛くなると思うんだ。

 だから泣き止んで、
 山南さんの前で、花桜スマイル沢山見せてあげなって」





涙で滲んだ先、
瑠花と舞は私に微笑みかけてくれた。



「食器洗い、続きもやっとくから。

 洗濯物も、舞と終わらせるから…… 
 花桜は少し息抜きしておいでよ。

 お寺で花でも見てみると、落ち着くかも」



そう言いながら二人は、
私を炊事場から送り出してくれる。



泣きすぎて真っ赤になっているであろう、
顔を洗いたくて、井戸へと向かう。


水をくみ上げて、
ゆっくりと顔を洗うと、
何時の間にか現れた山崎さんが、
手ぬぐいを差し出す。




「山崎さん……
 神出鬼没すぎです」 


「つれへんなー。
 花桜ちゃん、正直に言うてみ。
 今、傍におってほしかったやろ」



真面目な花桜しながら、
いつもの口調で軽く告げる山崎さん。