「食べながら少しずつ」
促されるままに、お皿の中のご飯に箸を進めながら
ゆっくりと空白の時間を話した。
「下関でアメリカ商船を砲撃してきた。
京に戻ったのは少し前だよ」
「ならっ、晋兄は?」
「晋作?知らないね。
彼と僕の道は、違えてしまったみたいだ。
あんな臆病者は気にするに値しない」
義兄はそう言うと唇を噛みしめたまま黙り込んでしまった。
無言の時間は、私にとって苦痛の時間で、
そんな時間をやり過ごすために、意識を集中させて
箸を進めながらゆっくりとやり過ごす。
「久坂さん、失礼します」
二人だけの部屋に、ズカズカと入ってきたのは
私の知らない数人の男たち。
「貴様、新選組にいるらしいな。
奴らの弱点を聞かろ」
長州の人たちだと思わせるその人は、
私を脅迫するように次々と質問を浴びせてくる。
近づいてくる顔と体。
座っていた場所から立ち上がり、
逃げるように後ずさりをする私の背後は、
もう逃げ場所がない障子。
ここは隣の部屋の障子。
もう逃げれない。
そう思った時、突然の隣の障子が開け放たれて
姿を見せたのは斎藤さん。
思わぬ登場に言葉すら出てこない。
斎藤さんの隣には、確か……
花桜にちょっかい出してらしい監察方の山崎さん?
すぐに私は斎藤さんに守られるような形で彼の背後にまわされ、
彼の登場に緊張が走った長州の義兄以外の奴らは剣を抜いて、
斎藤さん目がけて向かってくる。
そんな彼らの太刀筋を見極めて切り返していく斎藤さんと、
クナイで切りつけて援護する山崎さん。
次々と倒れていく長州の人たち。
その切っ先は義兄へと向けられる。
ダメっ。
「いやっ、二人ともやめてっ!!」
二人の間に強引に割り込む私。
もう恐怖も何もなかった。
どちらも……失いたくないから。
「やめてっ!!
義兄も斎藤さんもやめてください。
私が……何も言わずに一人でここに来たから」
私がここに来たから、
二人が戦うことになってしまってる現状。
こんなことを望んだわけじゃないのに。
もう誰も犠牲になんてなって欲しくない。
「今日、義兄に聞きたかったことがあるの。
私はこの場所に未来からやって来てる。
この世界のこと……どうなるか知ってるの。
池田屋事件、そこで長州は負ける。
義兄も塾仲間の一人を失う。
そして……あなたも……。
そこまでして……そこまでして、
義兄さんは……それをしなきゃいけないの?」
勢いに任せて吐き出した言葉。
嗚咽と一緒に絞り出した言葉。



