「何も隠してません。
 ただ紙を燃やしただけ。

 土方さんもご存じのとおり、
 私も瑠花も花桜も、他の時代からここに来たの。

 向こうに帰って勉強が追いつけなかったら
 どうしてくれるの?

 一日一日、勉強しなかったら単語も漢字も忘れてしまうの。

 競争社会生き残れないの。
 その為に勉強して何処が悪いの?

 だけど未来のものなのよ。
 この時代には本来使われてない知識の勉強。

 証拠隠滅に燃やすしかないでしょ?
 この時代には残しちゃいけない情報なんだから」




ムキになって言い返す私。
嘘だけど嘘じゃない。



だけど義兄からの手紙と待ち合わせ場所を
知られるわけには行かないから。



そして私にはやりたいことがある。
 



*


『……そう……。



何処かで歴史を変えたいの。
もう悲しまなくていいように。

泣かなくていいように。


ただ……歴史を変えたいだけ』




まただ……。

心の奥底から湧き上がるもう一つの声が
私の心とシンクロしていく。







- 回想 -




瞼の裏側に焼きついたように流れるのは……
いつかの見た夢。


殺される義兄。



『いやぁ~』


真っ暗な暗闇に包まれたその場所に響く叫び声。


その隣には斎藤さんがいて足元には血を流して倒れている浪人。

その人の傍で、ゆっくりとお腹に手を当てて
微笑む……存在(ひと)。


……あれは、私……。




でも次の瞬間……晋兄も義兄も、
この場所にいる人たちも……真っ赤な血に染まって倒れてしまう。


……いやっ……。


こんな最後は、もういらないから。



逃げたくても逃げ出せない映像の恐怖。


気を紛らわすために頭をどれだけ振っても
逃げ切ることなんて出来なくて私の意思を無視して
次から次へと瞼の裏側に浮かび上がっては消えていく。




「いやっ、もうやめてっ!!
 私をかき乱さないで」



そんなな言葉をその場で罵りながら
私の意識はまた沈んでいった。



目が覚めたら……自分の部屋の布団の中に
居るみたいだった。




誰が連れて来てくれたんだろう……。




確か土方さんに疑われて。 




まさか、土方さんが?