深く息を吐き出してゆっくりと目を開くと、
周囲をキョロキョロと見渡す。


畳……?。


布団の上で体を起こすと体に痛みが走った。



「気がついたのか?」




襖が突然開いて、隣の部屋から入ってくる男の人。




「海岸で助けて以来
 眠り続けて……」





えっ?




海岸で助けた?
眠り続けてた?





私の前に腰をおろしてゆっくりと手を伸ばして
髪に触れる……その人。





……貴方は誰ですか?……




目覚めたところは知らない場所。




そして目の前に座ったその人のことも
私は知らない。



気が付いたらこの部屋で寝かされていた。




「名前は?」




その人に尋ねられるものの
何も思い出せない。





靄(もや)がかかったような真っ白な世界が、
私を包み込む。



何かを考えようとすると頭痛が酷くなって
両手で頭を抱え込みながら首を振る。




「おいっ。
 何やってんだ?」



その人の声が遠くで微かに聞こえた気がしながら
私の意識はまだ遠のいていった。




次に目が覚めたときも、
同じ布団の中で寝かされていた。



文机に向かって何かをしてる
背中に気が付いて、
ゆっくりと体を起こした。