「だけど勝手なこと……」




そう言って近藤さんと土方さんの方に
視線を向ける。



「楽しそうじゃないですか?

 近藤さん、
 少し体動かしてもいいですよね。

 瑠花たちの世界の技って言うのも
 見てみたいと思いませんか?」




えっ?



そんな……。


見せるほどのモノじゃないと思うけど。



「山波くんはどうする?」


「私……舞と久しぶりに手合せしたいです。

 小さい時から、
 ずっと一緒に練習してきたから」


「加賀くんは?」




ふと脳裏に浮かぶのは、まだ小さな二人が必死になって、
手足のマメ作りを競い合いお互いに、痛さとを乗り越えて
今に繋げてきた時間。



『花桜は、おじいちゃまのあとをつぐから、
 もっともっとつよくなるの』

『舞だってつよくなるもん。
 花桜ちゃんにはまけないんだから』



何時しか、学校が変わり……
共に闘うことはなくなったけど、
大会ではいつもいいライバルだった。



花桜との時間は、
いつも私を前に進ませてくれる。



無心になって、
花桜と打ち合いたい……。


私の弱さを断ち切るために。




ゆっくりと頷いた。




「やったねvv」


瑠花が楽しそうな声を出して喜んだ。

 



これが私たち三人の自然体……なんだよね。





そのまま……場所は道場へと移された。




花桜と二人、竹刀を握って
ゆっくりと向かい合わせに立つ。




お互いにアイコンタクトを取り合うと、
いつもみたいに、
瑠花がその手をゆっくりと降りおろした。




適度な緊張感が部屋の中を走っていく。




お互い、譲らないまま仕掛けるタイミングを
探り合って足を動かしていく。




来るっ。



花桜の呼吸から覚悟を決めた時、
私も一気に動き始める。


響き合う打ち込みの音。
花桜と私の掛け声。



その後はもう周囲の声も届かない。



目の前の花桜のみに集中していく。




一撃、一撃がずっしりと感じられる。