直接、目を見て話すなんて出来ないから
視線は、神社の庭で駆け回る小さな子供たちを見つめながら……。




「僕に……憧れた?

 以前……君は芹沢さんの部屋で僕に語った。
 
 僕は……労咳で死ぬ。

 そして……芹沢さんと、お梅さんを殺すと……。

 君が話した通り、僕はこの手で二人の命を奪った」




えっ?




「全ては……あの人の思うままに、
 動かされてたんだ。

 京に来た後も、すぐに人なんて殺せなかった。
 僕の剣は実戦には脆いほど弱かったんだ。

 実際に人を殺したことのない
 僕がどれだけ息巻いても、怖さも凄みもない。

 近藤さんにとっては何時まで経っても、僕は小さな子供のままで
 それは……土方さんにとっても、試衛館で学んだ人たちにとっても、
 変わることはなかったんだ。


 だけど……あの人だけは違った。

 あの人だけは……僕を一人の剣士として見てくれた。
 初めて人を斬ったのは、あの人と京の町に出た夜だった。

 そして……あの人は言った。

 土方さんが作った局注法度。
 法を破るは、切腹。
 
 切腹には介錯人が必要で
 その介錯は……沖田、全てお前がやれ。

 あの人は……ただそう言った。


 人を殺すことを教えて……僕に役割をくれた。

 近藤さんの役には立ちたい。

 だけど……子供のままでしか見て貰えない僕には
 何も出来ることがないから。

 僕には、甘やかす人ではなくて
 ただ一人の剣士として見てくれる、あの人が嬉しかった」



同じように、時折庭で遊ぶ子供たちを見つめながら
沖田さんは、ゆっくりと言葉を続けた。


知らなかった沖田さんと鴨ちゃんの時間。
  

沖田さんの中にも、鴨ちゃんは大きく息吹いてたんだ。



「お梅さんは……似てたんだ……。
 僕の大切な姉さんに……」


「沖田ミツさん?」



お姉さんの名前をいきなり切り返したのに
びっくりしたのか、やっぱり戸惑いの表情を浮かべる。



「あっ、ミツさんの名前も新撰組のドラマで知ったの。
 私の世界の情報」


「あっ……」



最後の一言に、納得したかのように
小さな声を上げた沖田さん。



「話を折らしてごめんなさい。
 それで?」


「あぁ……。

 何が似てるって、答えられるわけじゃない。
 ただ……似てたんだ。

 僕の中の遠い記憶の姉さんに……。
 だから……言葉を交わすのが楽しかった……」


そんな二人を……沖田総司は、
自分の手で殺したんだ……。