「行かなきゃ」




稲光が空一面に広がる中、
私は沖影と共に道場を飛び出す。





沖影の真上に落ちた稲光は、
そのまま空を切り裂いて……
私は真っ暗な世界に吸い込まれた……。



  








目が覚めた時……私は古びた、
小さなお堂のような場所に居た。




「えっ?」




ゆっくりと体を起こして、
沖影を探す。


沖影は壁に立てかけられていた。



沖影に手を伸ばして、
お堂の扉へと近づく。



外に誰かいる?



気配を感じて、息を潜め身を縮めながら、
その瞬間を待つ。





ゆっくりと扉が開かれて、
足を一歩踏み入れたとき、
沖影を大きく振りかざした。





私の切っ先をすーっと翻ってよけると
聞きなれた声が降り注いだ。



「なんや、花桜ちゃん。
 つれへんなー。

 よーやく見つけた言うのに……」



えっ?

この声……。



「……山崎さん……」



沖影を手にしたまま剣をおろして
立ち尽くした私をがばっと胸元に抱き寄せる山崎さん。


えっ?



「お帰り。
 オレの子猫ちゃん……」



この呼び方……。


帰って来たんだ……。
私の世界(居場所)に……。




「ただいま」



山崎さんの腕の中、小さく紡いだその言葉に、
山崎さんは強く私を抱きしめ返した。