「鴨ちゃん、お梅さん。
今日も来たよ。
これがねー私が住んでた、月の着物だよ。
コテがあれば、もう少し可愛らしく髪の毛も
セット出来るんだけどねー。
この世界にはないから……」
鴨ちゃんが居たとき、私の世界を月の世界だと何度も
楽しそうに尋ねてきた。
だから毎日……ここに来て、
あの日までに語りきれなかった月のことを
もっともっと話してあげる。
だから……もう一度、声を聴かせてよ……。
あの場所では決して流れることのない
涙がこの場所でだけは頬を伝っていく。
そんな涙を隠してくれるように、
降り出す雨。
慌てて立ち上がった途端、
草履の鼻緒がちぎれて
そのまま後ろにひっくり返りそうになった。
それを背後から支えてくれた存在。
色白の髪を高く結い上げて流しているあの人。
沖田総司。
よりによって、どうして彼が今ここに居るのよ。
総司は……鴨ちゃんを殺した仲間なんだよ。
私から大切なものを奪った。
振りほどくように拒絶をするものの、
その腕は、私の手首を掴んで離さない。
「人殺しの癖に。
私に何のようなのっ!!」
そう叫んだ途端、彼の手は力を失い
私の腕はすぐに解放された。
彼は……何も言わず、
ただ天を見上げて雨に顔を打ち付けられてた。



