「……そうだね……」




小さく言葉を返した。




その後、舞は食器を持って私の部屋から出て行った。




花桜が居なくなったあの日から、
舞がこの場所の掃除や洗濯を全て手伝っている。



舞にとっても……舞の大切な、
長州に人に鴨ちゃん殺しの罪をなすりつけた
この場所の人たちの為に働き続ける時間。


理不尽な世の中だね。



食事の後、フローシアの制服に袖を通す。


そう……。

この制服を着て、
私たちはこことは別の世界で生きてた。


そっちの方が夢だったんじゃないか?

っと思いがするほどに長い時間、
この世界に居続けてる気がする。


実際には……そんなに長くない。


だけど……心はその長さに壊れていきそうで。



一人で髪を梳かす。


その単純な行動が鴨ちゃんとお梅さんが
居なくなったことを強く知らせる。


髪を結いあげてくれてたお梅さん。
そんな私たちを優しく見つめ続けた鴨ちゃん。


髪を上の方で、柔らかく結ぶと
クルクルと指先に髪を絡めていく。


コテがあれば……もっと思い通りに
髪型をセット出来るのに。


久しぶりに私の世界の服を身に着けて、
私の世界の髪型を結って、二人が眠るお寺へと、
部屋を出て歩いていく。



すれ違う隊士たちが、
不思議そうな視線を向けてくるけど、
そんなの私には関係ない。


邸を抜け出して、
裏門からお寺の方に続く道を駆けていく。




あの日からの毎日の私の日課。




お寺の庭で、紅葉を数枚拾い上げると、
二人が眠るその場所へと持っていく。




お寺の片隅。
少し大きめの石が二つ。



今みたいに立派なお墓じゃない
こじんまりとした石の下で二人は眠ってる……。




どれだけ立派な葬送をして
見送ったと後世で言い伝えられていても、
やっぱり……あの人たちがやったことは、
そんなに綺麗に受け入れられていいことじゃないよ。


紅葉をお墓の前に舞い踊らせると
ゆっくりと座り込んで両手をあわせる。