現代から過去にとぶ物語の恋愛シュミレーションゲーム。


私もいろんなゲーム楽しんだことあるよ。


でもその物語の中の主人公は、
すぐにその時代の人たちと仲良くなって、
その世界の歴史を大きく変えていく。


信頼も絆も勝ち取って名実ともに、
伝説になって恋に落ちて。



だけど……そんなに都合よくいかないよ。


この世界の人間で私が唯一、心を許せるのは鴨ちゃん。
そして鴨ちゃんが信頼してるお梅さん。


新選組のメンバーだって、
名前は知ってる。


だけど……その人たちを憧れる時代は終わったの。


その人たちは……今の私が大切な、
その人の命を奪う人なんだから。



……どうしたらいいのよ……。




何も出来ないけど……何も出来ないなりに……
私は鴨ちゃん……貴方に何をしてあげれるの?



「瑠花、どうした?

 そんな思いつめた顔して」


後ろから降り注ぐ優しい声。



「……鴨ちゃん……」


その手は、安心しろっと語るように私の頭にポンと降り注ぐ。


「……瑠花、笑ってろ……」


そう言うと、そのまま盃を私の前へと差し出す。
鴨ちゃんの盃にお酒をゆっくりと注ぐ。


一人静かに飲み続ける鴨ちゃんが、
その盃を私の方へと差し出した。


「えっ?」


戸惑って答えると鴨ちゃんは、
その盃を私の手の中へと握らせる。


「一杯くらいいいだろ?」


そう言いながら、
盃に注がれたお酒。

両手の中にすっぽりと納められた、
盃を黙って見つけて、鴨ちゃんをじーっと見つめる。


「瑠花、飲んでみろって」


鴨ちゃんの言葉に背中を押されるように、
一気に盃の中身を口の中に流し込む。


途端に麹酒独特の酸味が口の中に広がる。


味わうなんて余裕なくて、
一気に飲み下すのがようやくで……。


必死に飲み下した後、
お茶を飲みに駆け込む私を鴨ちゃんは、
楽しそうに笑って眺めてた。


お梅さんから、お茶を貰って一気に飲み干すと
お梅さんもまた大きな声で笑って。