「…何で今祝詞さん?!」


不意に頭の中に現れた名前と顔。


自分でも理由が分からない。



「…もしかしたら誰かに相談したいのかも私…」


その相手が祝詞さん…


──いや、きっと彼が“大人”だからだろう


この前も最もらしい台詞をくれたし…



「…大人なら家にも2人いるもんねっ!」


私はドアノブに手を掛けた…が、すぐに放した。



───家の大人は…


お父さんは悩みのなさそうな天然キャラで、お母さんはそんなお父さんと結婚してしまうくらい欲の欠片も知らない人。


それでもキレたときは厄介な、私にもよく分からない性格の持ち主達…。



「───変に気遣われたくないし…やっぱり───」


私は携帯を開き、着信履歴の“祝詞さん”を押そうとした


が、突然の着信によりそれを妨げられた。



それでも画面に出たのは“祝詞さん”の文字


「…もしもし?」


この人、いつもタイミング良いか悪いかのどっちかだな…


『祝詞だけどさ、…この前はごめんな?何か酔った勢いで電話しちゃって』


「いえ…何語か分からなかったから切っちゃったけど。」


そういえば祝詞さんと話すの、あの時以来だな…