「…もう何なの、ワケ分かんない…」
呆れすぎて、戦う気にもならない。
ここで泣いたら負けな気がして、歯を食いしばる。
「安心しろ。俺だって婚約破棄なんてされたくないんだ。無理強いはするつもりはない」
「……」
…言葉と行動が合っていない。
どうせわたしが何を言ったって、何とも思わないくせに。
だけど、忠見さんとの婚約がなくなる代わりに奏多との関係も終わるだなんて嫌だ。
かと言って、奏多だけを選んでパパを裏切ることも、わたしにはきっとできない。
…春までの辛抱。
運命は、わたし次第。
決断のときまで、2人の間でうまくやっていけばいい。
「こんなの、どうかしてるよ…」
捨て台詞を吐き、隅で小さくなって忠見さんからできるだけ離れる。
「…ごめん」
「…っ」
なぜか謝る彼の声を背に、ギュッと目を閉じた。


