「…っ…」 ぐっと、奏多の胸に押し付けられた。 「…っゆりちゃん…!」 力いっぱい、抱きしめられる。 「…大丈夫。…大丈夫だから…」 耳元で奏多が囁く。 「…ゆりちゃんは悪くないよ」 「……っ」 “大丈夫” “夕梨亜は悪くない” …そんなこと、あの頃もう何回も言われた。 でも、わたしがあの時“走って”なんて言わなかったら…って、その思いは拭われない。 思い出した途端、罪悪感に呑まれてしまった。