「…そっか、分かった」 ため息ひとつついた後、奏多が口を開いた。 「だったら俺はもう何も言わない。ゆりちゃんの思うように、うまくやって」 「え…」 下がることのない目尻と、上がることのない口角。 ……突き放された。 ドクンと嫌な音が、胸で大きく響く。 「大丈夫なんだったらそれでいい」 そう言ってわたしを映していた目を伏せ、1人で歩き出す奏多。 「あ…」 すっと離された手に、冷たい風が当たる。 足は鉛のように重く、地面に張り付いて動かない。