恋愛ウエディング

彼氏もいない。

好きな人もいない。

気になる人もいない。

そんな私が今まさに、結婚式会場で『ケーキ入刀』しようとしている。


……眩暈がする。

まさか自分にこんな事が起ころうとは。


目の前の大きなケーキを見ながら、私は少し泣きたくなる。


「私…これ…はじめてなんですけど…」


絶望的な気持ちでそう言う私に負けないくらい絶望的な顔で、隣の人は頷いた。


「奇遇だな。……俺もだ」


私達は見つめ合い、大きく息を吐く。


「さあケーキ入刀!!……の前に!!」


もういっそこのハッピーウエディングの『ハッピー』って部分を両断してやろうと構えたときだった。


『の前に』、という不可思議な言葉に、私達は行動をとめられる。


…の前に?

ケーキ切る前になんかあったっけ?


健二さんを見ると彼も思い当たることがないのか茫然としている。

そんな私達をよそに能天気に司会者はこう言った。


「お二人がお互いを『好き』になった瞬間を暴露してもらいましょう!!」


拍手と歓声の会場と正反対に、私達の頭は真っ白になった。


…え。

ちょっと待って。

本当に、待って。

何その二次会みたいなノリとかそういうのは今どうでもいい。

問題はそこじゃない。

そう。

そこじゃない。


…それ、聞くの?

『私達』に?


問題は、そこ。


信じられない気持ちで司会者を見ると、『流れなんで』みたいな顔で両手を顔の前で合わせている。


な…流れって…。


腹の下のほうから沸きあがってくる憤怒という絶叫を、なんとか、本当にぎりぎりでなんとか抑える。


変えようよ!!

そこは!!

臨機応変に!!


何とか打開策を向こうが練りはしないかと思っているうちに会場のざわめきが静まりはじめた。

問われてからの間が長すぎたんだと気付いた時には、周りはもう聞く体勢になってしまっていた。


……ああ。

……もう。

本当に。


なんでこんなハメに。