僕らが今いる今日は

　美術室の隣の第一準備室は、換気が悪いせいもあって独特なきつい油の臭いがたちこめている。
もう三年も、ほぼ毎日嗅ぎつづけた匂いだけあって、気分を悪くすることはないし、むしろ落ち着く。
まあ、体には悪いんだろうけど。
筆、洗浄液、古新聞、空き瓶、…。
ごちゃごちゃした棚から必要な道具を探すことにも慣れた。
大方の物は場所を覚えてしまったから。
でも久々に使うものを探すのは骨が折れる。
他の道具が、倒れたり、雪崩を起こしたりしないように慎重に探すのは、大変なのだ。
絵の具の乗ったキャンバスやイーゼルが倒れてくるのは、まだいいとしても、万が一、油やらよくわからない液体やらがふりかかってきたら、なんて想像したくもない。

　棚の奥にお目当ての物を見つけた。
わたしが腕を伸ばして、目当てのキャンゾールの缶を掴むのとほぼ同時に、隣の美術室の戸を閉める音がした。