部屋に戻って、ベッドに寝転んでいた。
今日はつくづく、ついていなかった。
金銭がらみでも損をするし、晩ごはんの時間がいつもより遅いことにおじいちゃんは機嫌を悪くして、それでお母さんも不機嫌になってしまった。
 おじいちゃんいわく、晩ごはんは六時じゃないとダメ。
でもお母さんに言わせると、そういうおじいちゃんの頑固で古臭いところがダメなのだそうだ。
わたしもそうは思う。
だけどわたしから見たらお母さんも相当頑固だと思うし、どうしてお互いに譲り合って上手くやっていこうとしないんだろうと思う。
おじいちゃんがちょっと晩ごはんが遅くなるのを我慢して、お母さんが一言「ごめんなさい」と言って、その日のおかずをおじいちゃんの好物にしちゃえばいいのに。
もうそういう気遣いもできないくらい、お互いがお互いのことを嫌いになってしまっているということなんだろうか。
わたしの生まれたころには、二人はとっくにそういう関係だったらしい。
それから約十七年、お互いに憎しみ合って、陰口や聞こえよがしに皮肉を言いあって、悪循環は続いている。
お父さんはとっくの昔に諦めてしまったのか、二人の関係には口を挟まない。
わたしはおじいちゃんもお母さんも、もちろんお父さんだって嫌いじゃない。
我が家の歪みは、もうどうしようもないところまで来てしまっているんじゃないかと、不安で、悲しくて、悔しくて、腹立たしくて、もどかしくてたまらない。
 

     *


 やらなければならないことは山ほどある。
もう五月だし、塾の子はみんな受験勉強に本腰を入れ始めている。
そういうことだって、頭ではわかっていても、一度こうしてベットに寝ころんでしまうと、体を起こすのが億劫で、このまま眠ってしまおうかという気になる。
そういうわけだから、せっかく買ったシュークリームも、冷蔵庫に入れたままだ。
今日中に食べてしまわないと悪くなるだろう。
わかっていても、動く気にはならなかった。
どうせ今週の提出課題はすべて終わっている。
毎日一枚ずつ提出しなきゃいけない数学のプリントは月曜にまとめて一週間分やってしまったし、英語の課題も昼休みに済ませた。

……でも、頑張れ。

重だるい体を起こして机に向かう。
ただでさえ、進学校に行った子に出遅れてしまっているのだから。
机の端に置かれた大学案内のパンフレットにため息が出る。
本当は本気で行きたいわじゃないんだと思う、多分。