不意に、目の前に翳された掌に驚いて、顔を上げた。
望が「やっと気づいた」と笑いながら言った。
いつもと変わらない昼休みだ。
ついさっきまでは、机を向い合せてお弁当を食べていた。
今はその机に数学の問題集とノートを広げて、参考書片手に問題を解いている、わたしだけなんだけど。
「真思、ぜんぜん気づかないんだもん」
「集中してたんだよ」
「昼休みなのに。やりすぎじゃない?」
そんなことはない、と思う。
受験生なのだから。
半面、仕方ないかな、とも思う。
半分以上は就職するし、その他はほとんど短大か専門学校、四年制大学進学を目指している生徒なんてほとんどいない。
おかげで教室の空気はだらんとしている。
これが進学校だったら…なんて考えるだけ無駄なのだろう。
目の前でケータイを扱っている望も、デザイン関係の専門学校に行くと言っていたし。
「まあね、そういうの真思らしいっていうのかなぁ?」
自分から話を振ってきたくせに、望は自分で勝手に結論付けて納得していた。
そういう子だ。
そういう子だから、望といるときは無駄な言葉を使わなくてすむ。
望は「今度真思に勉強教えてもらおうかなあ」とわたしの参考書を勝手にぱらぱらと捲って、さっぱり理解できなかったのだろう、「やっぱり真思って、レベルがなんか違うよね」と顔をしかめた。
ちょっと鈍くさいというか、いじらしくて、それでもどこか憎めないのは、彼女が始終ほわほわした笑顔を浮かべているからだろうか。
女の子らしいというのは、まさにこういう子のことを言うんだろう。
可愛いし、人当たりがいいということもあって、男女問わず友達も多い。
だからどうしてわたしと仲良くしているのかは、よくわからない。
わたしは望とは正反対、友達は多くない。
自分から声をかけることはめったにないし、女子女子したことも苦手だ。
新しクラスになってから、いつの間にか望が側にいることが当たり前になってしまったけど、いつの間にか離れてしまうかもしれない。
それはそれで、かまわないのだけど。
望が「やっと気づいた」と笑いながら言った。
いつもと変わらない昼休みだ。
ついさっきまでは、机を向い合せてお弁当を食べていた。
今はその机に数学の問題集とノートを広げて、参考書片手に問題を解いている、わたしだけなんだけど。
「真思、ぜんぜん気づかないんだもん」
「集中してたんだよ」
「昼休みなのに。やりすぎじゃない?」
そんなことはない、と思う。
受験生なのだから。
半面、仕方ないかな、とも思う。
半分以上は就職するし、その他はほとんど短大か専門学校、四年制大学進学を目指している生徒なんてほとんどいない。
おかげで教室の空気はだらんとしている。
これが進学校だったら…なんて考えるだけ無駄なのだろう。
目の前でケータイを扱っている望も、デザイン関係の専門学校に行くと言っていたし。
「まあね、そういうの真思らしいっていうのかなぁ?」
自分から話を振ってきたくせに、望は自分で勝手に結論付けて納得していた。
そういう子だ。
そういう子だから、望といるときは無駄な言葉を使わなくてすむ。
望は「今度真思に勉強教えてもらおうかなあ」とわたしの参考書を勝手にぱらぱらと捲って、さっぱり理解できなかったのだろう、「やっぱり真思って、レベルがなんか違うよね」と顔をしかめた。
ちょっと鈍くさいというか、いじらしくて、それでもどこか憎めないのは、彼女が始終ほわほわした笑顔を浮かべているからだろうか。
女の子らしいというのは、まさにこういう子のことを言うんだろう。
可愛いし、人当たりがいいということもあって、男女問わず友達も多い。
だからどうしてわたしと仲良くしているのかは、よくわからない。
わたしは望とは正反対、友達は多くない。
自分から声をかけることはめったにないし、女子女子したことも苦手だ。
新しクラスになってから、いつの間にか望が側にいることが当たり前になってしまったけど、いつの間にか離れてしまうかもしれない。
それはそれで、かまわないのだけど。


