僕らが今いる今日は


「その茶髪目立つし。
ねえ…
すごく迷惑なんだけど。
昨日からなんなの?
自分の事しか考えてないわけ?」

「何だよ、昨日はあんなに快くほうじ茶シュークリームくれたのに。
それに髪は地毛、人を髪の色で判断すんなよ」

 誰がいつそんなこと言った、と頭にきた。
昨日だってわたしはずっと機嫌が悪かった。
髪の色だって目立つと言っただけで、性格を判断した覚えはない。
正直、黒髪だろうが金髪だろうがボウズだろうがどうでもいいのだ。
友達があんたに片思いしている、しかも、そういう子が学校中にいるらしい。
だったらわたしにとって一番の疫病神だ、相澤走という人間は。
 今は家のことと自分のことで精一杯。
余計な恨みや嫉妬なんかを買って面倒事に巻き込まれるなんてごめんだ。

 腹が立つ。
人が必死になってやってるというのに、どうしてこの人はこうも鈍感なんだろう。
今すぐ怒鳴りつけてここから出ていってもらいたい。

「昨日はこっちの都合でたまたまそういうことになっただけ」

険のある言い方にはなったけど、結局声は荒げなかった。
表情も真顔のまま崩れていないはずだ。

 相澤は驚いた顔になって、それ以上話しかけてくることはなかった。
沈黙が重苦しいと思ったのか、相澤は後手で、少々乱暴に戸を閉めて出ていった。

 少しだけ、ちょっと感じ悪くしすぎたかもしれないな、と思った。