【短】猫似男

「誰から…?」


「美千子からだけど…ま、また後でかけ直すよ」


ごめん、美千子!

心の中で強く謝った。


「いいよ、出て?ほら、早くしないと切れちゃうよ」


拗ねてても、やっぱり幸人は優しいんだな…って、何だかうれしくなった。

美千子には悪いけど、用件だけ聞こう。


「もしもし?」


『杏奈!?ちょっと聞いてよーっ』


この調子だと、また愚痴かな?


ギュッ


後ろから幸人に抱きしめられて、さっきのことを思い出しちゃった。


そして、幸人が小さな声で呟いた。


「電話切ったらダメだから…」