あたしたち恋してた。

「親にはとつぜん引っ越すって言われたとき正直実感なくてさ…、単身赴任にも出来たんだけど家族は、一緒がいいって母さんが言ったんだよ。」

懐かしそうに、空を見上げる幸人。

「俺は、あの時中学生で。何もできなくて…、自分の無力さを思い知って…。だから、親に高校はこっちがいいって言ったんだ。」

だから、さよならは言えなかった。

幸人が、自嘲気味に笑う。

あたしは、理由も知らずに幸人を責めてたんだ。

そんな自分が嫌になった。