ラブハンター☆

「あ~!」
「うわっ!何!?」

桜の叫び声にビックリしてがばっと起き上がる元気。思わず桜の顔を見ると目には涙。

「わっ!どーした?」
「…………」

-匂う~っ。微かだけど~……アイツの香水-

桜の嗅覚が敏感に感じ取った匂い。昨晩会った女性の香水の匂い。ナイーブな時だから無意識にポロポロと涙がこぼれる。

「元兄ィ~っ。ヤダよぅ………」

いつものように自分の胸に引き寄せようとのびた元気の手を押し戻す。
ホントは元気の胸にしがみつきたいけど……いつもの安心する元気の香りじゃない。神経を逆撫でするあの恋敵の匂い…桜は顔を手で覆う。そんな桜の態度に元気は頭をかく。困惑しているのだ。

「元兄ィ~……昨日のあの人、付き合ってるの?」
「え?」
「朝帰りもあの人と居たから?抱いてたの?」
「抱くって…おいおい~どうした急に」
「元兄ィの胸……あの人の残り香する」
「うっそ。分かんね…」
「絶対するもん!」


感情が溢れ出す。今気持ちを悟られるのはマズいのに。でも止まらないのだ。元気があの女性と……考えただけで心がどす黒く渦を巻く。急に血の気が引く。急上昇した血液が急降下した感じ。意識が遠のく。貧血だ。昔から時たまこうなる。


「桜!?」
「いやっ触んないで……元兄ィの香りじゃなきゃ………」


遠くのほうで元気が何か言ってる。意識がとぎれて何も分からなくなった……。



-ん……あったかい-
「気がついたか?」
「元兄ィ……」


ふと気付くといつの間にか元気の腕の中にいた。シャツの肌触り。あの匂いは……しない。代わりにするのはシャボンの香り。

「風呂入って来た。もう匂いしないだろ?」
「ん………」
「桜は高ぶった感情が急に下がるとこうなるよな、昔から」
「………」
「昨日のアイツ、彼女じゃないよ。大学のサークルが一緒であのバイト紹介してもらっただけ」
「本当?」
「うん。俺桜に嘘ついた事ある?」
「………ない」
「だろ?確かに一緒に飲みには行ったよ。匂いは酔っ払って一人じゃ歩けなかったからマンションに送って行った時に付いたのかもな。ちなみに送り狼にはなってませんから」

桜を落ち着かせるようにギュッと抱き締めてくれる。