「ん………」
ぼーっとする頭を抱えて起き上がる。
「目ぇ覚めた?」
ソファーに座ってタバコをふかしているの太陽。眉間にしわを寄せて明らかに不機嫌そう。
「何で私ここに……あ」
そうだ。私太陽の部屋に逃げて来たんだ。
「元兄ィ……」
「兄貴ならバイト行ったけど」
「……そう」
-私なんかよりもバイトが大事なんだ。元兄ィはあの女の人をとるんだね-
「はーっ…」
深い大きな溜め息。
黙ってそれを見ていた太陽はまだ三分の二あるタバコをガシガシと灰皿に押しつけて立ち上がると桜の元に。
「お前……ヒマ?」
「なっ……見れば分かるでしょっ!?暇じゃないわよ。落ち込んでるのよっ!」
「要はヒマなんじゃねーか」
「はぁっ!?」
怒りでテンションが上がってきた桜の腕を掴んでベッドから立たせる。
「こい。遊び連れてってやる」
「ええっ!?」
勢いで元気にあんな事言ったけど、本気で太陽と出かけるつもりじゃなかったから、かなりビックリ。
そんな桜を強引に連れだし、自分のバイクに乗せた。
-オン!オンオン、ウオンッ……!-
聞き慣れた癖のあるマフラー音。この音がすれば太陽のバイクだってすぐわかる。
いつの間にか外はすっかり暗くなっていた。街のネオンが風と共に流れる。
-どこ行くんだろ-
さっきから何度も行き先を尋ねたけど、太陽は一度も声を発しない。
そのうちバイクは一本の路地に入る。するとそこには……
「なに…これ」
色とりどりの単車や改造した車が所狭しと並べられている。その一角に設けられたスペースに太陽のバイクが滑り込む。
-ちょっと~来るとこ間違ってるよぉ?-
すっかり圧倒され萎縮する桜をバイクから降ろすと、黙って手を引いて歩き出した。


